最終更新日:2021年7月20日
身近な人が亡くなり、慌ただしく葬儀を終えると、悲しむ間もなく、様々な手続きがスタートすることになります。
その手続きは大きく分けて死亡したことに伴う諸手続きと相続に伴う手続きがあり、さらに「相続に伴う手続き」は相続財産の承継手続きとそれに伴って生じる相続税等の税務手続きに分けることができます。
この「相続財産(遺産)の承継手続き」のことを一般的には「相続手続き」と呼びます。
相続手続きの代表的なものには、土地や家の名義変更手続き(相続登記)や凍結された預貯金口座の解除・解約手続きなどがありますが、どのような相続手続きが必要になるのかは、亡くなられた方が残した財産によって様々です。
預金口座を沢山持っている、不動産がある、株式を持っているなど、相続財産が多ければ多いほど、手続き先は増えますので遺族への負担や労力は多大なものになります。
死亡に伴う 諸手続き |
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相続に伴う 手続き |
承継手続き (相続手続き) |
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税務手続き |
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相続手続きのすべての基本は相続人を確定するところから始まります。まず役所に出向いて亡くなられた方の戸籍等を集め、法定相続人を調査します(戸籍等の集め方についてはこちら)。
次に故人が残した財産を調査する必要があります。不動産については役所で名寄帳を取得し、法務局で登記の情報を調べます。また、預金・株式等については各金融機関・証券会社などで調査します。
相続人と相続財産が確定したら、相続人間で遺産の分け方を話し合い(遺産分割協議)、遺産分割協議書を作成し、あとは各相続財産に関する窓口で手続きをすることになります。
遺産の種類 | 手続先 |
不動産(土地・建物) | 法務局 |
預金・投資信託等 | 各金融機関 |
株式・投資信託等 | 各証券会社 |
自動車 | 運輸支局 |
農地(届出) |
農業委員会 |
まずは遺言書の有無の確認
相続手続きは、遺言があるかないかで手続きの方法・必要書類が大きく異なります。
遺言がある場合は遺言書に書いてある内容に従って相続手続き(遺言執行)を行いますが、遺言がない場合は遺産分割協議による相続手続きを行うことになります。
遺言が残されていれば、相続人の間での話合いによる遺産分割より遺言内容が優先することになりますので、もし相続人の間で遺産分割が終わった後に遺言書が見つかった場合には、手続き自体がやり直しになるなどの問題が生じる場合があります。
そのため、相続が開始した場合は生前に遺言書を作成していなかったかどうかを最初に確認しましょう。
公正証書遺言の探し方
公正証書遺言や秘密証書遺言を平成元年以降(東京公証人会所属の公証人作成のものは昭和56年1月1日以降、大阪公証人会所属の公証人作成のものは昭和55年1月1日以降)に作成している場合は、全国各地のどの公証役場でも遺言書の有無を「公正証書遺言検索システム」を使って検索してもらうことができます。
自筆証書遺言の探し方
自筆証書遺言の場合は、作成者本人(遺言者本人)が遺言書を自由に保管しているため、自宅の金庫の中、仏壇、タンス、貸金庫などの様々な場所をしっかり探すしか方法はありません。
そのほか、もし生前に懇意にしていた弁護士や司法書士、行政書士などがいれば、遺言書の作成を依頼していなかったかどうかを確認するようにしましょう。
なお、自筆証書遺言が見つかった場合は、そのままでは相続手続きに使用することができませんので、まずは家庭裁判所で「検認」の手続きが必要になります。
※平成30年7月6日に法務局における遺言書の保管等に関する法律(以下「遺言書保管法」)が成立しました。遺言書保管法は法務局において自筆証書遺言に係る遺言書を保管する制度です。詳しい内容については後日「相続コンテンツ」で記事を投稿します。 |
遺言が残されていない場合には、遺産分割協議による方法で相続手続きを行うことになりますが、遺産分割協議を行う前段階として、まずは相続人の調査(戸籍一式の収集)と相続財産の確認を行う必要があります。
「相続人の調査」とは、戸籍等を取得し、相続人が誰になるのかを確認・確定することですが、この「相続人の調査」は特に注意しなければなりません。
遺産分割協議が有効に成立するためには、共同相続人全員の参加と合意が必要となり、一部の相続人を除外してされた遺産分割協議は原則として無効となります。
また、そのような瑕疵のある遺産分割協議書ではそもそも相続手続きを行うことはできませんので、もし相続人の確定を誤ってしまった場合や、一部の相続人を除外してなされた場合はやり直し・作り直しが必要になってしまいます。
したがって、この相続人の調査は非常に重要なものとなり、間違いのないように法律上相続人となる者(法定相続人)を確定させる必要があります。
基本的に相続手続きを行う際は遺産分割協議書が必要になりますが、すべての相続手続きで遺産分割協議書が必要になるとは限りません。
そもそも相続人が1人の場合は、協議する相手がいませんので、遺産分割協議(遺産分割協議書)は不要になります。
また、遺言がない場合で、かつ全ての財産を各財産毎に法定相続分で分割する場合であれば、遺産分割協議書を作成しなくても相続手続きを行えます。そのほか、遺言が残されていて遺言どおりに相続する場合なども遺産分割協議書は不要です。
遺産分割協議書について詳しくは「遺産分割協議書の作り方」をご覧ください。
相続手続きを行う際に基本的に必要となるものは以下のものです。
➊戸籍・除籍謄本一式または法定相続情報一覧図の写し
法定相続人が誰であるのか確認するためのものです。戸籍・除籍等の交付先は本籍地の市役所・区役所・町村役場になります。法定相続情報一覧図の写しの申出・交付先は法務局になります。
❷遺産分割協議書や遺言など
誰が何をどれだけ取得するのか確認するためのものです。遺産分割協議書は自身で作成するか、または行政書士等に作成を依頼できます。なお、金融機関等の手続きでは、遺産分割協議書を作成しなくても手続き先の所定の用紙(相続届)に従って解約等の手続きをすることができる場合があります。
※上記の必要書類は基本的に必要となるものですので、一部の相続人が相続放棄をしていた場合は「相続放棄申述受理証明書」が必要になるなど、ケースバイケースで必要書類は異なります。